ラナたちは今、南側の大通りを視察しているのだが、正午を知らせる教会の鐘の音が響いたので、取り敢えずは腹ごしらえをすることにした。

町の食堂で情報収集もできたら……と考えている。


白壁の美しい大きな食堂に入ると、大勢の町人で賑わっていた。

十人がけの大きなテーブルに案内され、そこに座ると、続いて入ってきた商人風の出で立ちの若い男ふたりが、ラナたちと同じテーブルに着く。

他に空いているテーブルはないため、混み合う時間は相席となるようだ。


メニュー表を広げたラナが「ねぇ、この町の名物料理はなにかしら?」と、斜め向かいに座った男に尋ねる。

すると、「お嬢さん、旅の人かい?」とにこやかに、商人の彼は答えてくれる。

「ここに来たら、何てったって豚と羊肉の料理を食べないとな。大豆と豚バラ肉の赤ワイン煮や、ラムチョップのカツレツが最高さ」


「じゃあ、それにするわ!」とラナが目を輝かせて張り切れば、もうひとりの商人も情報を与えてくれる。

「もし土産を買うつもりなら、ベーコンがいいよ。去年の夏、町の北側に大きな燻製工場ができたんだ。安くてうまい。隣国にも大量に輸出していて、この町の重要な交易品になりつつある」