花の名前を知りたがるラナに、物知りのイワノフが教えてくれる。


「ゴインキョウという花じゃな。東洋原産の水辺に咲く花で、この辺りでは確かに珍しい。種が旅人にくっついて、運ばれたのかもしれませんな」

「そうなの……」


遥か東のエキゾチックな国から種が運ばれてきたとは、ロマンチックだとラナは考えている。

彼女のサンドイッチから、蒸し鶏が滑り落ちそうになっていて、それを注意したオルガが花について補足する。

「図鑑に書いてあった花言葉は、“いつか恋が叶う”、ですよ」


オルガがそう言った直後に、ラナ以外の者の目が一斉にカイザーに向く。

「な、なんだよ……」と戸惑う彼は、サンドイッチを皿に置くと、なにかをごまかすような咳払いをしてから立ち上がった。

「摘んできてやる」とラナに言ったカイザーは川へ向けて歩き出したが、二歩目で彼女に止められた。


「駄目だよ!」

「なんでだ? 欲しいんだろ?」と顔だけ振り向き、不思議そうに問う彼に、ラナは真顔で言う。