パクチー……。
 そういえば、昔は媚薬として使われていたんだったな。

 芽以が日向子に言っていたことを思い出しながら、逸人は、圭太と芽以の会話を聞いていた。

 まあ、芽以もパクチー嫌いなので、意味はないが。

 だが、確か、香りに催淫効果があるとか言うのではなかったか。

 この店には、朝から晩まで、パクチーの香りが満ち満ちているはずなのに、ちっともいい雰囲気にならないんだが、と思っている目の前で、静と圭太が話し出した。

 静も日向子が圭太を試すような真似をしていたのに気づいていて、調子を合わせてやっていたようだった。

 いい奴だからな、静。

 ま、多少、女癖の悪いところはあるが、と思ったあとで、ハッとする。

 こんなパクチーの残り香が漂う中で、静と芽以を一緒にしていたら、静を芽以が好きになってしまうかもしれない。

 って、なんか前も思ったぞ、こんなこと。