「……お前らは、何故、開店しているときに来ない」

 そう言いながら、逸人は、静のために、ココアを入れてやっていた。

 たぶん、静が好きなのだろう。

 美味しそうだ。
 生クリームたっぷりのココア、と逸人が作っているのを横から眺めていると、
「飲むか?」
と逸人が訊いてくる。

「いえいえ、そんなこれ以上、お手をわずらわせては」
と言ったのだが、

「顔が笑ってるぞ」
と言われ、結局、入れてもらった。

 しかし、困ったな。
 どのタイミングで圭太を外に出したらいいのやら、とチラチラ上を伺いながらも、みんなと窓際の席で、チャーハンを食べた。

 静はもう食べたあとだったらしく、ココアだけだったが。

「ココアが好きなの?
 意外ね。

 女たらしの画家さんが」
と言う日向子の言葉を、静は、

「画家じゃないよ。
 ただの絵画教室の先生」
とご丁寧にも否定する。

 って、女たらしは否定しないのか、と思いながら、芽以は、まだチャーハンを食べていた。