二階に潜んでいた圭太は、下の会話を全部聞いていた。

 特に、声の大きな日向子の話がよく聞こえてくる。

「どんだけラブラブよ、あんたたち」

 呆れたように言う日向子の声。

 確かに気になっていた。

 此処に来るたび、芽以と逸人が共に居る姿が、しっくり来るようになっていることに。

 子どもの頃から、芽以も逸人もお互いが苦手なようで、常に距離があったというか。

 妙な緊張感があったのに、何故一気に此処まで距離が縮まる? と思っていた。

 それがお互いを意識してのことだと気づかなかったのが、圭太の敗因だったし。

 ざっくりしているところが、圭太のいいところではあるのだが。

 そんな風に、他人の微妙な感情が読めないところが、重役たちと上手くいかない原因のひとつでもあった。

 このままでは、逸人と芽以が、ちゃんとした夫婦になってしまう。