「へえ。そんな最期を迎えたのかいあんた。まあ、殺した相手が悪かったよ」

 登は体をビクつかせた。
 鈴の音のように綺麗な女の声が聞こえたのだ。

「動物を虐めたり殺したりしたら、あんただけじゃない。あんたの身内全てに不幸が降りかかるのを知らないのかい?」
 声は後ろから聞こえてくる。

「お前だけじゃなくて、お前から後七代、祟られるんだよ」

 登は自分の後ろから聞こえてきた声に驚き恐る恐る振り返ると、紅色の昔風の着物を着たお洒落な髪型の年増女が自分の髪の毛をするりと撫でながら立っていた。これはもちろん昭子のことだ。

「まあ、だいぶけったいな死に方をしたもんだねえ」

 女は哀れなものを見るような目をしている。
 更にその後ろから現れたのは、首に一周何かで切られた赤い傷がぱっくりとついていて、頭には髷をこしらえて変な着物を着ている男が眉間に皺を一本深く刻み、口をへの字にひん曲げてこっちを睨んでいた。その手にはメロンソーダが握られている。
 首に切られた傷、メロンソーダといえば侍しかいないだろう。

 しかし登にはこの二人にはまったく身に覚えがなかった。
 二人を交互に見て記憶を呼び起こすが、やはり今までに関わったことはないという結論に至った。

「まあ、自分のやったことってえのは必ず我が身に返ってくるっていう証明ってこったな。これは面白いことに、いままでのやつらみんな同じだ。己がやったことは、いいことも悪いことも必ず倍になって己に、もしくは何も関係ない子孫にそっくり返ってくるんだよ。自分の子供が不幸になって苦しむ様を心の臓がえぐられる思いで見させられながら死んでいくんだ。言わずもがな子供には恨まれる。これだから人間の世界はおもしれえ」

 末恐ろしいことをさらりと言ってのけたデニムの着物に金髪の背の高い男は首をぽきぽきと鳴らしている。いまにも飛びかかってきそうで恐怖を感じた。

 太郎が登を見下ろして口の周りを一周舐めた。