放課後。
2年2組の私と海里は、5組のケイを待つため廊下で待っていた。

海里は壁にもたれ、窓の外に広がる雪景色を見下ろしている。


そのとき、男子数人のグループが私達の前を通り過ぎ、何か噂話をしていたので思わず耳をそばだてた。


「椿(つばき)高に、超絶美人な姫がいるって知ってるか?」

「ああ、蒼生高の近くの高校だろ?」

「一回、見てみたいよな」

「今度、椿に行ってみるか」

「他の高校の奴らも狙ってるらしいから、乱闘にならなきゃいいけどな」


彼らはそのまま廊下の角を曲がり、話し声も遠ざかっていく。


「椿高の姫って。何の話してたの?」


気になった私は隣に立つ海里へ小声で尋ねる。


「その女も、あんたみたいな立場にいるってことだよ。悪く言えば人質、か」


前に会った樹莉さんのような立場の人だろうか。
みんなに、守られていた。


人質ということは、私もその姫も、何かに利用されるということ……?


「姫……。海里も手に入れたいとか思うの?」

「興味ない」


どうでも良さそうな返事にどこかホッとする私。


「超絶美人なんて言われたら、ちょっとくらい見てみたいと思わない?」

「さあ。俺はあんたで手一杯だからな」


それ、手がかかるっていう意味?
反論しようとしたら、海里がぽつりと言った。