それでも周囲のお客さんたちは帰らず、落ち着きを取り戻した坂田さんが歌いだす。

すると、急に坂田さんは公園を歩きだし、さっきヤジを飛ばしていた男性に近づくと、その男性にハグしたのだ。ハグされた男性は、坂田さんに謝っていた。そうしてその場は収まっていた。

坂田さんを見に来る人の中には、坂田さんにスマホを向けている人もいる。歌を聞きに来ているというより、撮影目的に見える。

坂田さんご本人も言っていたけど、いまの自分は「見せ物になってしまっている、と。だから、ずっと歌い続けてきた三角公園を離れ、違う場所で歌おうとしているという。

そんな坂田さんを、周囲の人たちは愛情深く支えていた。
それを坂田さんもよくわかっていて、自分を支えてくれる人たちがいるから、こうして歌うことができている、と感謝していた。

歌手としての歌声はすばらしいと思う。だからこそ、お酒のせいで体調を崩し、もし歌えなくなってしまったらもったいなさすぎる。

でもお酒をやめる気はまったくないようで、知人の女性との会話で、

「完全にやめれてませんし、やめようとも思いませんけど」

「私もうアル中と、アル中じゃないところのギリギリで、歌手として、こうやって人間らしく生きてるっていうところを見せたろかな」

と、カメラに向かって言っていた。

お酒はやめずに、人間らしく生きる。

はたしてそれで大丈夫なのだろうか。