お母さんがあたしを捨てたことに間違いはなかった。
お母さんもその力を持って生まれた。
あたしの家系では代々、女がこの力を持って生まれてくるらしい。
それは例に漏れず、あたしも。
お母さんは自分の力のことを周りに隠していた。そんなとき出会ったのが、一人の男の人で。
それが……あたしの本当のお父さん。
一緒に過ごしていくうちにお互いに惚れ込んでいって、結婚を決めた。
だけど、お母さんは自分の力のことを打ち明けていなかった。
そのことを話してしまえば、お父さんがどんな反応をするか……お母さんはなんとなく悟っていたのかもしれない。
そしてあたしが生まれたとき、すべてバレてしまった。
あたしが、お母さんが普通じゃないってことを。
それからお父さんは人が変わったようだった、とお母さんは辛そうに話す。
力のことを知ってしまったお父さんはひどく憤って、毎日のようにお母さんとあたしに暴力を振るった。
その頃にはもう、二人の間に愛なんかなくて。
お母さんは何度も、あたしを連れて逃げようとした。
だけど逃げ切れることなんて一度もなかったらしい。
そのたびにいつもより多く殴られて、いつしか逃げる気力もなくなっていた……って。
「それを捨ててきたら、お前を許してやる」
ある日そんなことを言ったのはお父さんの気まぐれか、それとも面倒になったからなのか。



