「立候補じゃなかったし、もしよければなんだけど」
……戸惑った。
小説では、こんな展開にはならなかった。
ヒロインとヒーローがふたりで実行委員をやり切り、体育祭を成功させていた。
そして、距離はグッと縮まったんだ。
……なんて。
それはあくまでもあたしが書いた小説なんだから、違うことが起きて当然なのだけど。
「な、なんで……?」
誰も立候補しなかったから、じゃけんになったのに。
どうして今になって。
戸惑うあたしの耳元に、すみれちゃんはそっと口を寄せた。
「実は、怜央くんのこと……その、気になってて……」
揺れた髪の毛から、フワッといい匂いが漂ってくる。
一瞬頭の中が真っ白になった。
男子が怜央くんに決まったから、一緒に委員をやりたいってこと……?



