「やりー、いっただきー」
したり顔を向けてくるのは怜央くん。
あたしがいままさに食べようとしていたポッキーを、通りすがりに綺麗に奪い去っていったのだ。
「あー、ちょっとー!」
「へへっ、心菜がぼーっとしてるから」
ぼーっとって。
いつもあたしがトロいみたいに。
まぁ、いいか。
袋の中から新しくポッキーを取り出す。
束の間の休み時間。
数学で頭を使いすぎたから糖分補給に……と鞄から取りだしたお菓子を、あたしよりも先に怜央くんに食べられたのだ。
不意打ちは反則だって。
向けられた満面の笑みが眩しすぎて、ドキドキしてしまう。
「相変わらず仲いいじゃん」
ポンと肩をたたかれる。
その手の主は凪咲ちゃんで、目線の先は怜央くん。