「結衣ちゃーんっ!


今週末は北中との合同練習だって!」



「へ?本当に?」



「うんっ!結衣ちゃんの王子様に会えるよっ!」



「い、いやっ、私のじゃないからっ。喋ったこともないし…」





栞里が私に抱きついて笑う。



北中のバスケ部に二井礼央くんと言う子がいる。



実はその子が好きだったりして。




合同練習のたびに、あの子のバスケを見ていた。



あの子のバスケはのびのびしていて、なににもとらわれていなくて。



カッコいい。



多分、あの子は私のことなんて知らないけど。



見ているだけで幸せになれた。



本当はバスケは得意じゃないし、運動も好きじゃない。



でも、あの日、たまたま学校に用事があって、体育館の前を通りかかった時。




あの子のバスケを見て、あんな風になりたいって思った。




あの子みたいになって、あの子に気づいてもらいたいって、ただそれだけの理由で入ったんだよね。




だから、いつか、話をできる日が来たらいいな。





────fin.