その後、学院内ではある噂が立った。


浅海奏と雨宮譲、天花寺悠が雲類鷲真莉亜を取り合っている。


なんて逆ハー展開!


私としては、いつ彼らのファンからグサッと攻撃されるのかとヒヤヒヤしている。

せっかく死の心配は無くなったと思ったら、今度は別の問題が浮上してしまったので、私の安心できる学院ライフはいつやってくるのだろう。



そして、私には最近気になることが一つあった。

少し太った気がするので、運動をしようとすると「姉さん、運動はしなくていいから。ダンベル置いて」と蒼に止められるのだ。


このあいだから、二の腕の出ないパーティードレスを進めてくるので、二の腕の肉落とせの合図なのだと思っていたのに変だわ。


うーん、それにしても腕のあたりがやっぱり前と少し違う。動かしにくい。

夏服の時は気づかなかったけれど、冬服になると体型の違いがすぐわかるわね。高等部に上がったときに全て作るんじゃなくて、シーズンごとに作ればよかったわ。



「真莉亜どうしたの?」

どうやって痩せようかと思い悩んでいると、瞳とスミレが心配そうに声をかけてきた。


ちょっと恥ずかしい悩みだけれど、相談してみようかしら。


「実は……冬服がきついの」

「でも顔とか太ったって感じはしないけど」

瞳のいうとおり、顔あたりは変わった気がしない。問題なのは腕だ。足も少し太くなった気がするけれど、そこまで気にならない。


おかしいわね。カシフレでお菓子食べても太らないようにトレーニングは続けてきたはずなのに。



「腕周りが特にきつくて……」

スミレが華奢な指先で私の二の腕あたりに触れると、少し驚いた様子で目を見開いた。



「真莉亜って案外筋肉付いているのね」

「き、筋肉…………筋肉!?」

その瞬間、全てを理解した。

蒼がダンベルを没収した理由も、制服がきつい理由も、鍛えていたせいだ。



「ま、真莉亜! しっかり!」

「うわははは! 真莉亜ったら急に白目むいて変顔し出したわ!」


私、雲類鷲真莉亜、花の女子高生。


名家の令嬢で伯父は花ノ宮学院の理事長。

彼氏は学院内で人気のあるイケメン。大好きな友人と家族に囲まれて、幸せいっぱいの生活。



まさにイージーモード。






新しい目標は筋肉減らしです。





<残念系お嬢様の日常>完結

番外編などは魔法のiらんど、またはTwitter(プライベッター)に載せています。