「素敵な方だわ。お着物が似合ってらっしゃる」

「お二人ともとても素敵ね」

会場内で一際目立っているのは着物姿の男女だった。

流音様と桐生拓人かと思ったけれど、流音様の隣にいるのは別の人物。


「紅薔薇たち、ここにいたのか」

「よう。ご希望通り、着物だよ。真莉亜」

こちらへと歩み寄ってきた彼に目を見張る。

まさか雪花祭に出てくるとは思いもしなかった。


「け、景人様。参加して大丈夫なんですか?」

「平気。来年からは授業にちゃんと出る予定だから」

瞳の誕生日パーティーの時にそろそろ表の方にも戻ると言っていたけれど、本気だったのね。

周囲の女子たちは景人に釘付けのようで、その視線に気づいた本人は甘い微笑みを投げかけた。

女子たちは顔を真っ赤にして、騒いでいる。


……これはある意味学院内が荒れそうだ。



「まあ、カウンセリングルームの方が居心地いいだろうし、全ての授業に出るかは微妙だけど」

「きちんと出ないとダメだ!」

「……はいはい」

まあ、流音様がいればむやみやたらに近づいてくる女子もいないだろうし、景人も女遊びなんてしないだろうけれど。影で女の戦いはおそらく捲き起こるだろう。