泣きたくなるようなせつなさを抱え、小さな声で問いかける。
「…………いつでも、呼んでいいの?」
「そうだ」
「……大した用もないのに呼ばれたら、迷惑じゃない?」
「お前を失うことに比べれば支障ない」
自信なく問う咲耶に、和彰はきっぱりと答える。
──つまらない用で呼ぶなと、あきれられるのが恐かった。呼んでも、来てもらえないかもしれないことは、もっと。
咲耶は、自分が和彰に甘えても良い存在なのだと、その時やっと気がついた。
和彰の保護者のような気分が、自分のなかで大半を占めていると信じて疑わなかった。
けれども、いつの間にか、残りの隠れた想いのほうも、強くなりつつあったのかもしれない。
(どうしよう……)
強く焦がれるような、相手を求める想いの先を、知りたい気持ち。知って、相手にも感じてほしいと願う気持ち。
乞い、慕う……心。それは──。
腕のなかで身じろげば、力がゆるめられて。咲耶は、おそるおそる和彰を見上げた。
整った顔立ちの冷たい声音の持ち主。
女心の機微が解らず、なのに、時折むけられる優しさが胸をうつ──幼く優美な、神の獣。
(……幼い、ままなのかな……?)
指を伸ばして頬に触れれば、青みを帯びた黒い瞳が、真っすぐに咲耶を見つめてくる。
もう一方の腕を上げ、和彰の後ろ髪に手を入れた。
自分が抱いた想いを確かめるように、名を呼ぶ。
「……和彰……」
身体に残された官能の口火に突き動かされ、咲耶は和彰の唇を奪った。少しだけ強引で、試すようなくちづけを。
「──……今日は、一緒に寝よっか?」
わずかに離した唇で問いかければ先ほどとは違い、とまどったように揺れる瞳と目が合って。
薄明かりに照らされる頬に赤みがさしたように見えるのは、光の加減なのかと考えていると。
「一緒に……寝るだけか?」
思いもよらない問いかけが返ってきた。
咲耶は、くすぐったい想いに身を任せるように、和彰の首の後ろに両腕をまわす。
「…………いつでも、呼んでいいの?」
「そうだ」
「……大した用もないのに呼ばれたら、迷惑じゃない?」
「お前を失うことに比べれば支障ない」
自信なく問う咲耶に、和彰はきっぱりと答える。
──つまらない用で呼ぶなと、あきれられるのが恐かった。呼んでも、来てもらえないかもしれないことは、もっと。
咲耶は、自分が和彰に甘えても良い存在なのだと、その時やっと気がついた。
和彰の保護者のような気分が、自分のなかで大半を占めていると信じて疑わなかった。
けれども、いつの間にか、残りの隠れた想いのほうも、強くなりつつあったのかもしれない。
(どうしよう……)
強く焦がれるような、相手を求める想いの先を、知りたい気持ち。知って、相手にも感じてほしいと願う気持ち。
乞い、慕う……心。それは──。
腕のなかで身じろげば、力がゆるめられて。咲耶は、おそるおそる和彰を見上げた。
整った顔立ちの冷たい声音の持ち主。
女心の機微が解らず、なのに、時折むけられる優しさが胸をうつ──幼く優美な、神の獣。
(……幼い、ままなのかな……?)
指を伸ばして頬に触れれば、青みを帯びた黒い瞳が、真っすぐに咲耶を見つめてくる。
もう一方の腕を上げ、和彰の後ろ髪に手を入れた。
自分が抱いた想いを確かめるように、名を呼ぶ。
「……和彰……」
身体に残された官能の口火に突き動かされ、咲耶は和彰の唇を奪った。少しだけ強引で、試すようなくちづけを。
「──……今日は、一緒に寝よっか?」
わずかに離した唇で問いかければ先ほどとは違い、とまどったように揺れる瞳と目が合って。
薄明かりに照らされる頬に赤みがさしたように見えるのは、光の加減なのかと考えていると。
「一緒に……寝るだけか?」
思いもよらない問いかけが返ってきた。
咲耶は、くすぐったい想いに身を任せるように、和彰の首の後ろに両腕をまわす。



