なのに……なのに、どうして。 ギリッと奥歯を噛みしめている私に、加賀谷さんは少し笑う。 恐る恐る顔を上げると、自嘲するみたいな笑みが映った。 「……なんて。今さらだよな。悪い。忘れて」 買ってきた薬のお礼を言う加賀谷さんに、こくりと頷く。 加賀谷さんの気持ちが、本当はすごく嬉しいはずなのに。 『行くなよ』 松浦さんの表情や声が頭から消えないせいで、加賀谷さんになにも答えられなかった。