「悪いけど、あたしは帰って勉強したいから」


そう言って颯樹の手を離そうとするけれど、颯樹は痛いくらいにあたしの手首を掴んで離さない。


「ちょっとくらい、いいだろ?」


ニッと八重歯を覗かせて笑う。


その顔に自分の胸がキュンッと悲鳴を上げるのを聞いた。


颯樹のこの笑顔にやられてしまう女子は少なくない。


本人が知ってか知らずか、自分の我儘を通したいときに使う事も多かった。


「確信犯でしょ」


あたしは颯樹を睨み付けてそう言うと、颯樹は首をかしげたのだった。