体育祭。


僕たちの学校で一番最初に行われる大きなイベント。


イベントごとには気合を入れていて体育祭の1週間ほど前から毎日1時間は体育祭の練習が入る。


そして、放課後も練習に使っていいことになっている。


ということはだ。


ということはです。


言いたいこと、わかりますよね?



帰りが遅いのです。



どうしましょう。


帰りたい。



果乃に練習のことを伝えると、あからさまに拗ねられてしまった。


『…いじわる。…ばーか』



昨日の機嫌は極めて悪く、悪態をつき、布団に潜り込んでしまった。



今朝も果乃の部屋に顔を出すと、目も合わせてくれなかった。


『…やだ、起きてないもん』


起きてるのに、起きてないって言っちゃうあたり可愛い。


…多分、構ってくれるのがいなくなって寂しいんだろうな。


早く帰りたいのは山々なんだけども…。


「おい…真宮」


「ん?」


「もう全員行ったぞ」


「あ、ほんとだ」


この無愛想な男は水嶋千都(せと)。


『White liar』のベース。


イケメン無口が女子にはモテるのか、バンドの男子メンバーの中で二番目に人気。


もちろん一番人気は和馬だけど。



更衣室を出てみんなが集まっているところに行くと、女子が何やら騒いでいた。


「和馬くんって運動神経いいらしいよ〜」


「唯兎くんとなかなかなんだって〜。和馬くんの次に走るの早いって〜」