「もしかして、燃料タンクが爆発したんじゃ……」




オレが言ったその言葉が、オレと心美を不安にさせた。




燃料タンクが爆発したとしたら、船に穴が開いてしまったかもしれない。




そしてもしも、その穴から海水が流れ込んできたなら……。




観光船内はパニックの様相を呈してきた。




嵐の中で揺れる船は、海の真ん中で沈没する。




そしてこの嵐の中、大海に放り出されたオレたちを見つけ出してくれる人はいないだろう。




「船の中が慌ただしいよ。

みんな、この船が沈没すると思ってる」




心美がそう言ったとき、観光船は傾き、その角度はしだいに大きくなっているような気がした。




「オレはこんなとこで死なない!

オレにはまだ叶えていない夢があるから。

オレは絶対にアクションスターになってやるんだ!」




死が現実となって迫ってきたときに、オレの頭の中に浮かんだ大切な夢。




夢を語れば、人はオレをバカにするけど、オレは真剣に夢を叶えられるって、信じていた。




だけどオレは、自分の夢にチャレンジすらしていない。




もしかしてオレは、何者でもないままに、こんなところで死ぬのだろうか?