マルティナは少しミフェルとは距離を置きつつ、衣裳部屋へと案内した。先ほども感じた古着のにおいが鼻をかすめる。中を見て、ミフェルは「わあ」と顔を晴れ渡らせた。
「すごい、この部屋の存在は僕も知らなかったなぁ。男に見せびらかすものじゃないもんな」
「全部おばあさまの衣裳のようなのですが、もう着られないような昔のドレスまで取ってあるんです。それこそ、駆け落ちの時のドレスまで。これって、おばあさまが大事にしている思い出と言えるんじゃないでしょうか」
「そうだね。すごいね、マルティナ。君はおばあさまとほとんど面識がなかったというけど、ちゃんと彼女のことわかっているじゃないか」
ミフェルは遠慮なく奥に入り、ドレスを検分していく。マルティナはどうしたらいいかわからず、助けを求めるようにトマスを見上げた。
「……とりあえず彼の気が済むまで調べさせてあげればいいんじゃありませんか? 本当に遺書があるかは怪しいものですし」
ポソリと耳打ちされ、マルティナも頷く。
一緒に探すふりをしながら、マルティナはこの嵐のような青年を観察する。
十九歳だというが、身長はアンネマリーとそれほど変わらず、男性としては低いほうだろう。
栗毛の髪は少し癖があり、うなじのところでカールしている。小顔で全体にパーツが小さく、どちらかと言えば男性的な印象は薄い。夜会嫌いだと言っていたのは、その見た目のせいもあるのかもしれない。
どうしてこの青年がリタと仲良くなったのか、マルティナには疑問だ。
トマスもそうなのだろう。時折ミフェルに視線を送って、不審な行動がないかチェックしているようにも思える。



