伯爵令妹の恋は憂鬱



「うん、そう。誰も見つけないようなら僕が探すようにって。……実はさ、昨日会ったのは半分くらいは偶然じゃないんだ。クレムラート家の別荘に人が来ているらしいって一昨日街の人たちから聞いたから、遺書の存在に気付いているか確認しようと思ってたんだ。あの店に寄ったのは、持っていく土産を探すためだった」

「ローゼを見て驚いていましたね」

「あの髪色の女性を知っていただけ。知ってるだろ? うちのじい様が起こしたスキャンダル。再婚したと偽って女性を軟禁していたって話。あの女性が保護されたときに後ろ姿を見たんだ。あんな感じの髪だった。それで驚いただけ。でもおかげで君とも話せて、ラッキーだった」

「……はあ」

ミフェルは会話のペースも早い。マルティナはついていくのが精いっぱいだ。助けを求めてトマスに視線を送るも、相手が子爵子息だからかトマスはふたりの会話に口を挟まず、黙ってついてくるだけだ。


「さて、マルティナ。リタ様の大切な思い出ってなんだと思う?」

「思い出ですか? えっと」

そう言われてもマルティナはリタのことはほとんど知らない。ここにきて知ったことと言えば、クローゼットのドレスくらいだ。

「……ドレス。おじい様との思い出のドレスを、たくさん保管していました」

「それだ! どこ? 見に行こうよ」

「二階の衣裳部屋です」

ミフェルはぐいぐいとマルティナを引っ張っていくが、マルティナは普段からそんなに素早く動かないので、足がもつれて転びそうになる。