伯爵令妹の恋は憂鬱



「あ、それ……」

先ほどのドレスのメモを思い出し、ミフェルの言っていることは真実だと、マルティナには理解できた。どうして孫のような年齢の若者とリタがそこまで親しくなったのかわからないが、駆け落ちのことまで話すくらいだから、よほど親しくしていたんだろう。

「本当……なんですね」

マルティナが納得したことに、ミフェルは嬉しそうに笑った。

「信じてくれるんだ。いい子だね、マルティナ殿。……あのね、遺書は必ずあるよ。リタ様はそれを見つけてほしいって思ってるはずなんだ。だからね、僕、遺書を探したいんだ。この屋敷を散策する許可をもらえないかな」

「ミフェルさん?」

「フリード様は自分でここに来る気はないんだろう? 豪邸をお持ちのお貴族様はこんな別荘どうでもいいって思ってるってことだよね。僕は違う。リタ様の一番の友人なんだ。彼女の気持ちを捨て置くことなんてできないよ」

にかっと笑ったミフェルに、目を剥いたのはディルクやマルティナだけではない。

「あ、あんた、何言ってるのよっ。撤回しなさい。ミフェル! なんて失礼なことを」

アンナマリーは慌ててミフェルの頭をテーブルに押し付ける。ゴンと鈍い音がして、ミフェルは軽くうめいた。

「いってぇ。嫌だよ。どうして僕が遠慮しなきゃいけないんだよ。ここはリタ様のものだろ? リタ様が大事にしていたものを、姿さえ見せないフリード様にいいようにされるなんて耐えられないよ。僕を止めたいなら、フリード様を呼んでよ」

「ミフェル! ……ああ、申し訳ございません」

アンナマリーはすっかり青ざめ、ただただ頭を下げるのみだ。彼女が悪いわけではないので、マルティナは慌てて顔を上げるように言う。

「アンネマリー様、お気になさらないで。あの、でも、ミフェル様、屋敷を勝手に探されるのは困ります」

「じゃあ、マルティナが一緒に探してよ。それならいいでしょ?」

「え?」

ミフェルの勢いは止まらない。

「ね、決まり」と片目を閉じられて、マルティナには反論する余裕もなかった。