伯爵令妹の恋は憂鬱



午後になり、二頭立ての馬車が別荘の門をくぐった。
カスパーをはじめとした屋敷の人間が出迎えに並ぶ。マルティナもローゼとともに出迎えに出た。

「やあ、マルティナ様。この度は無理を聞いてくれてありがとう」

馬車から降り立ったミフェルとアンネマリーは、笑顔でマルティナに会釈する。

「やあ、カスパー。しばらくだね」

「これはミフェル様。お久しぶりでございます」

ミフェルたちがこの別荘にたびたび出入りしていたのは本当のようで、カスパーと顔を見合わせた後、ミフェルは勝手知ったる様子で、一階のテラスのある広間へと入っていく。

「ここだろ? リタ様、庭を見ながらお茶をするのがお好きだったから」

メイドたちが迷わず用意していた場所だ。マルティナは驚きのあまりぼうっとしてしまったが、アンネマリーはそんなミフェルを見て眉を顰める。

「ミフェル、案内される前からずかずか入り込むのは失礼よ。……ごめんなさい、マルティナ様。ミフェルは公式な夜会や舞踏会に出ないから礼儀を知らなくて。普段は出不精なんだけど、リタ様とだけは気が合っていてね。ミフェルが外出するなら、とよく寄らせていただいたのよ」

「そうなんですね。私は……おばあさまとはほとんど一緒にいたことがないんです。私は小さいころは別の屋敷にいましたし、本邸に戻ったときには、おばあさまはもうこちらで暮らしていたので」

「まあ、そうなの。だったら私たちみたいな他人が馴れ馴れしく屋敷に入り込んで不快な思いをさせたのではなくて?」

「そんなことはありません。良かったらリタおばあさまの話、聞かせてください」

アンネマリーはハキハキとした賢そうな女性だった。どちらかと言えばおとなしい顔立ちをしていて、見た目でもてはやされることはないだろうが、彼女の魅力は巧みな話術のように思う。ミフェルは自分勝手で強引な印象だが、アンネマリーは気遣い屋のようだ。マルティナの曇り顔を察知してか、先ほどから楽しい話題を振ってくれる。マルティナは彼女に好感を抱き始めた。