リタは子供好きには見えなかったため意外に思ったが、良家の子息に関しては態度が違うのかもしれない。
マルティナが黙っていると、会計を終えたトマスが戻ってきた。


「お待たせいたしました。……どうなさいました。こちらの方々は一体」

「あ、……こちら、アンドロシュ子爵のご令息と令嬢らしいの」

「子爵家の。それは、失礼いたしました。マルティナ様の従者を務めております、トマスと申します」


トマスは深々と頭を下げたが、ミフェルのほうは興味がなさそうにすぐにマルティナに向き直る。


「ふうん。ねぇ、マルティナ殿。別荘地にはいつまで滞在する? 僕たち、リタ様のお悔やみにお伺いしてもいいかな。本邸には父上が行ったはずだけど、僕ら、連れて行ってもらえなかったんだ。お別れしたいと思っていたのに」

「あ……ですが、お墓は本邸の近くですし……」

「気持ちの問題だよ。僕ら、リタ様とよくお茶会をしたんだよ。だからお別れのお茶会がしたいな。いいだろう?」


そういわれて、断れるはずがない。
ディルクに確認してから、と言いたかったが、あの別荘地で一番決定権を持つのは本来ならばマルティナなのだ。


「一週間程度の戻る予定なので……その」

「じゃあ明日! 午後のお茶の時間にお伺いするよ。いいだろ?」


ミフェルはなかなかに社交的な人物で、押しが強い。結局マルティナは押し切られるように「はい」と言ってしまった。