「きゃあ」
マルティナのもものあたりがトマスの右腕にのっている。マルティナは思わず彼の肩にしがみついた。
あの頃よりも重たくなったというのに、トマスには全くつらそうな様子はなかった。それどころか子供をあやすような態度で背中をポンポンとたたく。
「トマス、おろして」
「うつむいていると大事なことが見えなくなりますよ。フリード様には大切な人が増えただけで、ひとりも減ってはいません。あなたはフリード様にとってもエミーリア様にとっても大切な家族です。だからこそ、私が守るように言いつかってるんじゃないですか」
トマスはいつも、マルティナの気持ちを救い上げる。
涙がにじんできて、マルティナは上を向いたまま、しばらく黙っていた。
「あはは。なんかこういうのも懐かしいですね。執務室まで運んで差しあげます」
「……はい」
どこまでもトマスは子ども扱いだ。
もう子供じゃないとも思うけれど、変わらずにこんな風に接してくれるというなら子供のままでいい。
初めて会った頃のように、トマスにしがみつきながら、マルティナはこのまま時間が止まればいいのにと願っていた。



