伯爵令妹の恋は憂鬱



午後になって、マルティナはようやく執務室から解放された。というよりは、マルティナの効率が落ちているのを見て取ったディルクが、休憩するように進言したのだ。

「マルティナ様、お疲れでしょう?」

ローゼが待ってましたとばかりにお茶を入れてくれる。スコーンは屋敷の料理人が焼いてくれたのだそうだ。

「トマスは?」

「今は街に出ていますわ。厨房の人たちかもら買い出しを頼まれまして。大分前に出たので、そろそろ戻ってくると思いますけど」

「そんな」

ようやく仕事も終えて一緒にいられると思ったのに。
マルティナは泣きたくなってきた。

「私も行きたかったわ」

「そうですね。……気晴らしにいいですよね。夫に言って明日は街に出るための時間をとってもらいましょう」

「うん」

(でも、きっとローゼもついてくるのよね)

ローゼのことが嫌いなわけじゃないのに、邪魔ものみたいに思ってしまう自分が嫌になる。

「ローゼ、昼間は庭で……」

「はい?」

トマスと庭を散策していたことを訪ねようとして、何と聞いていいのかわからずマルティナは黙ってしまう。

「……トマスさんが心配してましたわ。マルティナ様はあまり難しい文章が得意ではないので、書類の確認で眠くなってしまうんじゃないかって」

「え?」