「神奈〜。相変わらず反射神経いいよね?俺の育て方が良かったんだねー」

「お前に育てられた覚えはないよ。兄貴なんもしてないで残るとか相変わらず卑怯だよね」

「だって誰も俺に当てて来ないんだもん」

その通りだ。女子が遊にボールを向けると
悩殺スマイルで女子が赤くなり遊とは別の方向に投げるから当たるわけがなかった。


「でも神奈がやる気出すとは思わなかったなー。簡単に当たりに行くと思ってたけど?」

笑ってる遊は横目で山口を見る
山口は面白そうな顔で矢沢兄妹を見ていた。


「俺より手ごわい人がいるとはね。」

「何いってんの?」

その遊の発言に和樹と樹も反応する。


「お兄ちゃん手加減しないからね?」

「ハイハイ、」


そして、遊が振り投げた豪速球に神奈は素早く構えてボールを受け止める。神奈の体は少し後ろに下がるも、今度は神奈の癖のある回転をつけてボールを遊に投げつけた。



そんな矢沢兄妹の激しいドッチボールに
1年A組は釘付けになっていた。
終わらない試合に山口は飽きてあくびをする。


「お兄ちゃんとなんで寝てくれないんだよ!!」

ボフッ

「この年になってなんで兄貴と寝るんだよ!!」

ビュッ

「俺が見てないうちにそんな大人な女になりやがって!!」

ボフッ

「子は育つんだよ!!あたしの心配より自分の心配しろ!!」

バシッ

「俺はいーの!!ずっと独身でいて神奈に寄生し続けるの!!!!」

ビュッ

「…きもち…悪いんだよオオオオオオォオ!!」

懇親の一球と遊のハートがガラガラと砕ける音が重なり遊の顔面にボールがめり込む。


「…ふー。女子の勝ちね」


きゃー!!!!と女子達は喜びの歓声を上げる


その目の前で遊は呆然と立っていた。

「気持ち悪い…気持ち悪い…気持ち悪い…」

「おい?遊くん?おーい?ダメだこりゃ」


初めて本気で神奈に気持ち悪いと言われて
メンタルが崩壊した遊

そんな彼を無視して神奈は校舎に入っていく