「そこで大丈夫だよ。ありがとう」


理科準備室にノートを運び終え、その言葉に私は小さく息を吐く。

帰りのホームルームの後、学級委員長の坂井(さかい)くんは先生に雑用を託されていた。
彼は「ちょっと手伝って」と近くにいた私に声をかけてきたのだ。


「どういたしまして」


坂井くんとは全然話したことがないけれど、委員長というだけあって、真面目で温厚なクラスメートだ。
誰とでも気軽に話せてしまうし、周りをよく見ていると思う。


「白さん。一つ、聞きたいことがあるんだけどいいかな」


ノートの並びを整えていた私に、坂井くんは突然そう言った。


「え、な、何?」

「最近よく狼谷といるけど、二人って仲良いの?」


一体何を聞かれるんだろうと思えば。
思いがけない質問に、うーんと首を捻ってしまう。


「一応友達、かな」

「そうなんだ。……あのさ、悪く思わないでほしいんだけど」

「うん?」

「狼谷とつるむのは、やめた方がいいと思うよ」