一方その頃、三人は研究所の転送装置を使い、アメリカまで飛んでいた。そこは辺り一面の荒野で、なにもない場所だ。人気もない。夜の闇が辺りを支配し、空に輝く星々と月の灯りだけが微かに大地を照らし出している。凜太郎の左腕につけた通信機が鳴る。
「はい。凜太郎です」
「照子よ。今からぷりけつソードの使い方について説明するから、少し長くなるけどよく聞いてね。基本的にはぷりけつビームと同じで音声認識よ。通信機に向かって"ぷりけつソード装着!"って叫べば、あなたの右手にぷりけつソードが出てくるわ。逆に収める時は通信機に向かって"ぷりけつソード解除!"って叫べば消えるから。ぷりけつビームとの大きな違いは、ぷりけつソードは解除後でも再充填時間なしですぐにまた出すことができるって点ね。ただし、1度に出せるのは1本だけよ。後、ぷりけつビームほどじゃないけどエネルギーも多少使うから無駄に多用しないこと。当たり前だけど、ぷりけつビーム同様、変身してないと使えないから注意してね。ざっとこんな感じなんだけど、分かった?」
「うん、よく分かったよ。ありがとう、照子さん」
その時、照子はなにかを思い出したかのように声を上げた。
「そうだ。言い忘れるとこだったわ。ぷりけつソードの他にも新機能があるの」
「新機能?」
「そうよ。通常サイズ、つまり、身長は今のままで変身できるように改良したの。巨大化した時ほどじゃないけど、ある程度耐久力もあるわ。瓦礫に潰された程度なら死なないはずよ。消費エネルギー量も通常サイズなら微量で済むわ」
怪訝な表情を浮かべる凜太郎。
「それって、必要な機能ですか?」
「例えば、怪人に覚られずに、且つ、比較的安全に近づくこともできちゃうし、その状態のまま巨大化も可能だから怪人を奇襲することも可能よ。危険地帯を進んで住民を助けることもできちゃうわね」
「なるほど。たしかに、使い分ければ色々用途はありそうですね」
「使い方は簡単よ。いつもの変身時の言葉の語尾に巨大化する場合は"巨大化"、通常サイズの場合は"ノーマル"と言い足すだけ。ちなみに、なにも言い足さないと自動的に巨大化しちゃうから注意してね。後、通常サイズから巨大化する場合や、巨大化から通常サイズになる場合も基本的にやり方は同じよ。変身解除する方法は前と変わってないから」
「了解です」
「それじゃあ、みんなと研究所で待ってるから。頑張ってね」



照子からの通信が切れた。凜太郎は剣を使用すべく、まずは変身することに。コウとセアラもそれを察し、興味深げに凜太郎を見つめている。
「あ、あの~……」
凜太郎は恥ずかしそうに顔を赤らめながらうつむいている。
「どうした?変身するのだろう?案ずるな、貴様が変身するまでここで待っててやる」
「いや、そうじゃなくて……。ちょっと向こうむいて、耳塞いでてくれませんか?」
「何故我がそのようなことをせねばならん。理由を申せ」
"恥ずかしいから"とはなかなか言い出せない凜太郎。その場で黙り込んでしまう。
「理由がないのであれば従う意味もあるまい。さっさとしろ、時間が惜しい。我らも暇ではないのだ」
コウの鋭い視線が凜太郎を貫く。凜太郎は渋々、コウたちの見ている前で変身する決意を固めた。思わず溜め息が漏れる。
「では、変身します」
「うむ」
深呼吸をする凜太郎。
「ぷりけつぷりけつぷ~りぷり!ノーマル!!」
凜太郎は尻を突きだし、軽快に左右に腰を振りながら叫んだ。身体全体が白く輝きだし、光が凜太郎を包み込む。コウたちは凜太郎の突然の行動に驚きの表情を見せている。
 包み込んだ光が消えると、そこにはぷりけつヒーローへと変身した凜太郎が立っていた。全身桃色のコスチュームで口元は隠れており、頭の部分は尻の形をし、ヘソの位置には大きく"ぷ"と書かれ、丸で囲まれている。いつもの如く、尻の部分は丸出しの状態だ。コウとセアラは愕然としている。凜太郎は恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうだった。
「お、終わったか?」
「……はい。終わりました」
「今ようやく貴様の言葉の真意を理解した。貴様を辱めてしまったこと、詫びさせてほしい。すまなかった」
「謝らないでください。逆に辛いです……」
「そ、そうか。分かった」
「コウ様は晋助さんにあんな趣味がおありだったこと、ご存知でしたか?」
「あやつの趣味まで我は知らん。昔から変わったやつではあったが、よもやこれほどとはな……」
気まずい空気が三人の間に流れる。