怪人デカシリとの死闘から早くも二週間近くが経とうとしていた。地球には束の間の平和が訪れ、品川凜太郎たちはそれを噛みしめていた。



 ある日の夕方。凜太郎は学校の授業を全て終え、その帰りに所長の丸田晋助、研究員の目黒万次郎、千葉敏也、辻照子のいる研究所へと訪れていた。早朝から普段の業務に加え、あの死闘の翌日より行っているデカシリとの戦闘データの解析、そして新武器の企画開発をようやく終えた4人と凜太郎が研究所内の中央付近にある幅2m程のシルバー色に輝く、長方形型のテーブルを囲んで談笑している。晋助、万次郎、照子の前には紙コップに注がれたホットコーヒーが、敏也と凜太郎の前にはガラスコップに注がれたコーラがそれぞれ置かれている。
「今度の新武器は凄いぜ。な?所長」
敏也に話を振られた晋助がホットコーヒーを一口飲んでから答える。
「うむ。なんせあのぷりけつビームを防ぐ盾対策用に造った武器じゃからの」
「それは凄いですね!で、どんな武器なんですか?」
凛太郎の問いに晋助が自慢げに答える。
「思えばぷりけつヒーローにはヒップアタックやぷりけつビームといった、いわゆる必殺技はあっても武器はなかった。そして今回、怪人の盾対策用として開発した武器。それは――」
「それは?」
「盾を斬り裂く剣!"ぷりけつソード"じゃ!!」
晋助のドヤ顔に対し、呆然と立ち尽くす凛太郎。
「剣、ですか?」
「そうじゃ。剣じゃ。なにか問題でもあるのか?」
「問題、というか……。俺、剣道とかやったことないんですけど、大丈夫ですか?」
「心配せんでもよい。それに関してもすでに対策を考えておる」
「対策?」
「そろそろ来る頃じゃな」
壁に掛けられたアナログ時計を見て、晋助が呟くように答える。時計の針は17時を少し回っていた。
「来るって、誰が――」
凛太郎の言葉を遮るかのように、突如として5人の目の前に黒い渦が現れる。凛太郎は動揺を隠しきれない。それとは対照的に晋助たちは至って冷静だ。
「しょ、所長!!研究所内に黒い渦のようなものが!」
「あぁ、そうか。凜太郎くんは初めてじゃったの。あれは遠く離れた場所へ移動する際に使う、一種のワープホールのようなものじゃ。凜太郎くんも怪人が出現した時に転送装置を使って転送しとるじゃろ?あれと似たようなものじゃ」
「でも、そのワープホールを使って一体誰がこの研究所に……」
「おぬしの"師匠"となる奴じゃ」
「師匠?」