「じゃあ……帰ろっか?」
席を立ってリュックを背負った彼女に、あたしは顔の前で両手を合わせて言った。
「……ごめん。……先に帰ってもらってもいい?」
「あ、うん。じゃあまた明日学校で。ばいばい」
「うん、ばいばい」
誘いを断ったあたしに嫌な顔一つ見せずに、彼女は優しく笑い、手を振って教室を出て行った。
もうすこしだけ、ここに居たかったんだ。
ひとりで……。
ばらばらと受験生が教室をでていく。
しばらくするとあたしひとりになって、賑やかだった廊下も静かになった。
聞こえるのは、カチカチ……という時計の音だけ。
「はぁ……」
椅子の背に背中をつけた瞬間、ふっと力が抜けた。
終わった。
やっと終わったんだ……。



