昇降口について、靴を履きかえたとき。
「……なあ、永井……」
久我くんが、少し躊躇いがちにあたしを呼んだ。
「ん?なあに?」
頭ひとつぶんくらい高いその顔を見上げる。
なんだか、妙に真剣な顔。
……なんだろう。
「あのさ──」
「凜太朗ーーー!?」
と、そのとき。元気な声が割り込んできた。
えっ……と、久我くんとあたしの意識がそれた直後、ざわざわと騒がしくなる昇降口。
部活を終えたバスケ部の集団が一気に流れてきたのだ。
「今帰りかー?」
声の主は工藤くんだったみたいで、いつもの笑顔で近寄ってきた。
いま、久我くんはなにを言いかけたんだろう……。
気になるけど、久我くんはもう工藤くんに絡まれていた。



