これから雨が降るのかなぁ。
外は真っ暗だし、雷のなか帰るなんて拷問だよ。
雷が遠ざかるまで待とうか。
「永井って、帰り道どっち方面?」
ふいに掛けられた言葉。
気付くと、すぐ隣で久我くんもあたしと同じく空を見上げていた。
「あ……あたしは駅まで歩きだよ。……久我くんは?」
「俺は、学校前からバス」
「そっか……」
桜園の生徒は、大きく二通りの通学経路に分かれる。
近くの駅まで歩く生徒と、学校前からバスに乗ってさらに違う路線の駅へ向かう生徒と。
久我くんは、あたしとは帰る経路はちがうみたい。
せめて、同じだったらよかったのになぁ。
久我くんのあとを追っかけて歩けば、すこしは怖さがなくなったかもしれないのに。



