反則?反則ってなんだろう……?と思っていると、
「腹へった。メシ食いに行こう」
なんて口調と話題を変えるから、あたしまでお腹がすいてきた。
「うん、そうだね」
「そのあとどうする?美紗、行きたいところある?」
今日ははじめてのデート。
普通は、伊織ちゃんたちみたいに映画を観に行ったり、カフェでまったりしたりするのかもしれないけど。
「一緒に行ってほしいところがあるの」
心に決めていた場所があるんだ。
「どこ?」
「……あのね……お兄ちゃんのところ……お兄ちゃんが、眠っているところ」
凛太朗くんと一緒なら行ける気がしたの。
あたしもやっと、一歩を踏み出す時がきたんだ。
「いい……かな……?」
すこし不安で見上げたあたしに。
「もちろん。俺からも誘おうと思ってた」
優しく微笑んで、凛太朗くんは手を差し出してくる。
「行こう」
すべてを包んでくれるように暖かくて優しい手。
どこまでも引っ張っていってくれる大きな手。
この温もりを絶対に離したくない。
「……ありがとう」
あたしはその手を、ぎゅっと握った。