『お兄ちゃんいるの?』
お兄ちゃんが亡くなってから、こんな質問をされたのは初めてで。
心が動揺して……スプーンを持つ手が、小刻みに震えた。
あたしにお兄ちゃんは……。
お兄ちゃんは……。
居るけど……もう、居ないから……。
「いいな~。お姉ちゃんもお兄ちゃんもいるなんて羨ましい!」
声を弾ませる伊織ちゃん。
「そういえば、美紗ってすごく妹って感じがするもんね」
「あー、わかる。雰囲気から出てるよな!」
伊織ちゃんの言葉に、工藤くんが賛同してる声がどこか遠くに聞こえたそれは、昔から何度となく言われてきたこと。
しっかり者のお姉ちゃんと、優しく面倒見のいいお兄ちゃんを持つあたしは、典型的な末っ子気質に育ったのだと思う。
いつも誰かのあとをくっついていて、ひとりじゃなにもできない。
それは十分自覚している。