……ああ。
やっぱりこれは、お兄ちゃんのもので間違いないんだ。
「どうして、それ……」
久我くんは本気で驚いていた。
その表情は、久しく見ていなかった"生"のあるもの。
あたしが気付いていること、久我くんは知らなかったんだろう。
「ここに書いてある。お兄ちゃんのものだって」
お母さんがそうしたように、タグに書かれたイニシャルを見せると。
「……っ」
久我くんは大きく息をのんだ。
驚くほど、自分の声は落ち着いていた。
梅雨の中休みの空。
少し湿気を含んだ生ぬるい風が、向かい合ったあたしたちの髪を優しく撫でていく。
まるで、ここだけ時間がゆっくりと流れているようだった。
「知りたいの……久我くんがこれをどこで手にしたのか……」
「……っ」



