5時間目は移動教室のため、伊織ちゃんと一緒に廊下を歩いていた。
その途中。
「あ、蒼くん……」
移動教室の戻りなのか、正面から流れてくる人並みの中に蒼くんの姿を見つけて。
ついこの間までのクセで、反射的に身を隠してしまいそうになった。
でももう、自分の気持ちはちゃんと整理できた。
これからは、蒼くんに甘えるんじゃなくて、ひとりの友達として仲良くしていきたい。ずっと……。
「……美紗?」
「伊織ちゃんごめん、先に行っててくれる?」
目線の先にいる蒼くんの姿を確認した伊織ちゃんは。
「うん」
ニコッと笑うと、先を歩いていった。
そのまま蒼くんを目で追っていると、すれ違う瞬間あたし気づいて。
いつものように声を掛けてくれた。
「次、化学?」
あたしが胸元に抱えた教科書を指しながら。



