どのくらい泣いただろう。
泣いて泣いて疲れ果てて。
そのまま玄関に体を横たえていた俺。
……そうだ。
ふと思いたって自分の部屋に駆け込み、机の中を引っ掻き回した。
あのとき……泣いている俺に、遥輝君から手渡されたもう一つのもの。
そのままポケットにしまい、家に帰って机の上に置いて……それからなんとなく引き出しにしまった覚えがあったからだ。
それはすぐに見つかった。
「これだ……」
握りしめると、最後に触れた遥輝君の手の温もりがよみがえってくるようだった。
「遥輝君……会いてえよ……」
俺は遥輝君の名前を呼んだ。
それを握りしめながら、もう一度だけでいいから会いたいと、強く思った──。