君が泣いたら、俺が守ってあげるから。



***



しばらく呼び起こしていなかった遥輝君との思い出が、ものすごいスピードで頭の中で再生されていた。


玄関に崩れ落ちたままの俺。


フローリングの冷たさが、俺を現実に戻す。



「こんなことってあるのかよっ……」



遥輝君が……美紗のお兄さんだったなんて夢にも思わなかった。


だけど、よく考えればわかったことだったかもしれない。


美紗が高校1年生で。

去年お兄さんを病気で亡くしてて。

あの大学病院に入院してて。


ヒントはたくさんあった。


なのに、どうして気づかなかったんだよ……!


俺が美紗に初めて会った気がしなかったのは、遥輝君と雰囲気がよく似ていたせいだ。


大好きな妹だと、いつも自慢げに聞かされたその相手だったからだ。


放っておけない……気になる……そう思ったのは、全部、全部、遥輝君へ繋がっていたから……。