「……ったく、妹と一緒だな。凛太朗の涙も俺が拭いてやんなきゃいけないのか」
ははっと笑った遥輝くんは、ブランケットの上に乗せていたハンカチを手に取り、
「しょうがねえなあ」
俺の頬にそれを軽く乗せると「あとは自分で拭けよ」そう言って渡してきた。
俺はそれを手の中で握りつぶし、残りの涙は腕でぬぐう。
「……俺がいなくなったら……妹の涙拭いてやるやついなくなっちまうな……」
「……っ」
独り言のようにつぶやくそれがあまりに切実で、心が押しつぶされそうになる。
だから、いなくなるなんて言うなよ……。
新しい涙がまた頬を伝う。
「そうだ、これも」
遥輝君はパジャマのポケットからあるものを取り出した。
「妹にさ、これあげるとすぐに泣き止むんだ」
「……」
「だから凛太朗も泣き止めって」
何かを差し出す遥輝君。
……妹と一緒にすんなよ。
俺が手を出さないでいると、遥輝君の方から手を取ってそこに握らせる。
小さな存在感と、カサカサという音がした。



