「はーっ、寒いっ……」



家族に見送られて、受験会場の桜園(サクラゾノ)高校へ向かうあたしは、永井美紗(ナガイ ミサ)15歳。


凍てつく寒さが肌を突き刺す1月。

マフラーから少しだけ覗いた口元からは、白い息が澄んだ空気に舞う。



空は灰色。

予報通り、雪が舞ってきそうな空だ。




今から受験しに行く桜園高校は、第一志望校。


この高校に入るために、中学に入ったころからしっかり準備をしてきた。

成績もクラスで常に3番以内をキープして、A判定をもらった。



完ぺきだったはず、なのに。




……今から1ヵ月半前に、最愛のお兄ちゃんが病気で亡くなってしまった。