……ん?
「こっちへおいで」
「やだ!」
「カナ」
「やだもん!ママをさがすんだもん!」
その行動が理解できず、間に挟まれた俺はなすすべもなくことの成り行きを見守るだけ。
「カナ、言ったよね。ママは……もうここにはいないんだよ」
父親が諭すように言うが、女の子は首を強く左右に振り。
「やだっ!いるもんっ!」
そう叫ぶと、走ってここを出て行ってしまった。
……いったい、どうしたんだろう。
「すみません、ご迷惑をおかけしました」
父親は、俺たちに軽く会釈した後、肩を落としながら言った。
「あの子の母親は、1ヵ月前にこの病院で亡くなったんです」
「……」
言葉を失った。
そんな事情だったとは知らず。



