病院へは、バスで30分。
部活が休みの日や、休日部活が早く終わった時は顔を出すようにしていた。
「ばあちゃん、具合どう?」
「凛太朗、今日もきてくれたの?悪いね」
「悪くなんてないよ」
ここへ来るのが面倒だとか疲れるなんて思ったことはない。
母さんに言われなくても、俺はきっとここへきている。
顔を見ないと安心できないのは、俺の方かもしれない。
「そこにリンゴがあるからとってちょうだいな」
棚に置いてあるリンゴを指さすばあちゃん。
きっと、俺のためにむこうとしてくれているんだろう。
「俺リンゴはいらないよ」
「ばあちゃんが食べたいんだよ」
そんなこと言って、俺にくれるくせに。
でもばあちゃんの気持ちを無駄にするのも逆に悪いと思い。
俺はリンゴとナイフを持ってくると、だまってばあちゃんの隣にパイプ椅子を持ってきて座った。



