君が泣いたら、俺が守ってあげるから。



試験の出来が良くなかったんだろうか。



『うっ……ううっ……』



静かな教室。その声はよく響いた。


そんな姿から、なぜか目が離せなくて……


―――ガタッ。


彼女に気をとられながらペンケースをとろうしたせいか、机が動き大きな音を立ててしまった。


やば、と思った時には、彼女はハッとしたように顔をあげていた。


俺は見てはいけないものをみてしまったと、咄嗟に謝った。



『あ……ごめん』



すごく肌が白い子。そう瞬時に思ったのは、泣いているせいで顔や目が真っ赤だったのもあるかもしれない。


左右の耳の下で結ばれた、胸元までの黒髪。


大人しめの印象な彼女の大きな瞳からポロポロとこぼれる涙。


そんな姿はとてもはかなげで、不謹慎だが、綺麗だと思った。



『よかったら、これ使って』



俺はとっさに、ポケットに手を突っ込みハンカチを手渡していた。