ふと思い立って、鞄の中を覗き込んだ。
予感的中。ペンケースが入ってない。
……んだよ……面倒だけど取ってくるしかない。
明日ってワケにいかないんだから。
「悪い。忘れ物した」
「マジで?バス来たら先に乗ってるからな~」
「だな、寒ぃし」
薄情な友人たちに頷き、俺は校内へ逆戻りした。
暖房のついている校内は温かかった。
受験会場は3階。
「2-5」というプレートのついた教室へ入ると、誰もいないと思っていたのに女子生徒がひとり座っている。
……なにしてんだ?
不思議に思い、自分が座っていた席に向かいながら横目で見ると……泣いていた。
両手で顔を覆い、肩を震わせながら嗚咽を漏らすその姿に、いったいどうしたんだろうと興味を持ってしまったのは自然のことかもしれない。