だんだんと、自分の顔が険しくなっていくのがわかる。
「とにかく……それは遥輝のに間違いないでしょ?」
お母さんは念を押すように言うと、和室を出て行ってしまった。
お母さんは、あたしの部屋でこのハンカチを見つけた。
ということは、あたしが久我くんから手渡されたものには間違いない。
なのに、それがお兄ちゃんのものってどういうこと……?
引き寄せられるように、お兄ちゃんの遺影に目を向ける。
そこには日焼けした顔で爽やかに笑うお兄ちゃん。
……そういえば。
さっき久我くん、お兄ちゃんの仏壇をみたまま固まっていた。
ハンカチをじっと見つめる。
このハンカチはいったい……誰のものなの?
ほんとうにお兄ちゃんのものだとしたら、どうしてそれを久我くんが持っていたのか。
いったい、これをどこで手にしたのか。
静かに、胸の奥がざわつき始める。
けれど。
いくら考えても、点と線が結ばれることはなかった。