「うん。ごめんお母さん、それ、お兄ちゃんのじゃないんだ」
どのハンカチをなくしてしまったのかはわからないけど、残念ながらそれはちがう。久我くんのものだ。
お母さんの手からそれを受け取ろうとすると。
「なに言ってるの。遥輝のよ?ほらここ見て」
どこまでもお兄ちゃんのと言い張るお母さんは、内側に縫い付けられたタグを見せてきた。
そこには「H.N」と書かれていた。
「……え?」
手に取ってもう一度よく見る。
几帳面なお兄ちゃんは、自分の持ち物には自分のものだとわかるように記名していた。
そう、まさにここに書いてあるように「H.N」と。
どうして、久我くんのハンカチに、お兄ちゃんのイニシャルが?
久我くんが同じようにイニシャルを書いていたとしても、そしたら「R.K」になるはずだ。