「あの……」
そう声を掛けながら和室へ入ったけれど、途中で声を止めた。
正確には、止まってしまった。
そこには、仏壇を見つめながら微動だにしない久我くんがいたから。
しかも顔色は真っ青。
「どうしたの……?顔色……悪いけど……」
声を掛けるとハッとしたようにあたしを見た彼は。
「……っ」
声にならない声を発し。
「……悪い……帰る……」
そう言うとそのまま玄関に向かい、ふらついた足取りで靴を履くと玄関を出て行ってしまう。
それはあっという間の出来事だった。
「ちょっ……久我くんっ!?」
あたしはわけがわからず、慌てて靴を履いて外へ出るけど。
闇夜にのまれたその姿は、もう見えなかった。



