君が泣いたら、俺が守ってあげるから。



「よかったら、お兄さんにお線香あげさせてもらえないかな」



とても真剣な目で。



「ほんとに?ありがとう……」



嬉しかった。


会ったこともないお兄ちゃんに手を合わせようとしてくれるその気持ちは、やっぱり優しい彼の思いの表れのような気がして。


あたしは、玄関のすぐ隣にある和室に案内した。


ここに、お兄ちゃんの仏壇があるんだ。


お兄ちゃんの好きだったものや、綺麗なお花で囲まれている。


久我くんは仏壇の前に立つと、線香を手に取った。



「そうだ、あたしハンカチ持ってくるね」


「ハンカチ?」


「あの……久我くんが貸してくれたハンカチ……」



やっと、持ち主の手元に返せる。


それが久我くんだったなんて、これって運命かな。


なんて、柄にもないことを考えながらふふっと笑い、階段を駆け上がって自分の部屋に向かった。