ポカンとしていると、はにかむ久我くんの表情で蒼くんへ向けたさっきの言葉の意図がだんだん見えてきた。
……そっか。
蒼くんと帰るのが気まずいと思ってたあたしに、助け船を出してくれたんだ。
だから、"遠慮して"なんて。
久我くんて、意外と女心がわかるのかな。
「ありがとうっ……すごく……助かりました……」
素直な気持ちを口に乗せると、久我くんは照れたように笑った。
外に出ると、もうとっぷり日は暮れていた。
駅までの道のりを、ふたり並んで歩く。
あの場をしのいでくれただけでありがたかったし、ひとりで帰るつもりだったのに「送る」そう言ってくれたから。
「雨の日は……ありがとう」
久我くんとはあの日以来だし、特にメッセージでのやり取りもしていない。
学校であったら直接お礼を言おうと思っていたから。
「……べつに」
「久我くんがいてくれてよかった」
「……」